2月14日 土曜日 昼すぎ

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ぼくとリュウと数人体制で捜索にあたった。たしかに本番が近く練習は厳しさを増していたが、そこまで心をすりつぶしていたのだろうか。 ぼくはそれに気づけなかった。部長だと言うのに。 煩わしいと思ってしまったことを恥じた。 しかし、彼はすぐに見つかった。渡り廊下まで彼の嘆きや叫びが響いていたからだ。 体育館裏の焼却炉の前にいた。 「ちくしょー! 裏切りやがって! ちくしょー!」 彼の傍らにはイセリナが呆然となすすべ無く立ちすくんでいた。 「イセ。ヒルマのやつ、どないしたん?」 「詳しくは知らんねんけど、ヲタしてた子の熱愛報道が出たらしいわ」 「オタ?」 「熱烈なファンやったから」 「それで、なんで、このタイミング?」 「いや、実際は昨日出回ってたらしいねんけど、SNSもテレビもネットも見んようにして、必死に受け入れへんようにしてたらしいわ」 「涙ぐましい努力……でも耐えられへんくなったんか」 「そう」 彼女の切なそうな瞳と暑苦しいヒルマの背中に得も言われぬ不条理を感じた。 「誰なん? アイドル?」 「声優さん?」 「アニメの」 「たぶん」 「なんであいつ、あんな燃やすほどグッズ持ってきてんねん」 「今晩、そのヲタ同士が集まって、オフ会ってのがあるらしかってんけど、中止やって」 「そりゃそうやわな」 日本全国津々浦々でこんな悲しい光景が起こっているのだと思うとぞっとした。 焼却炉の小さな投入口へ、クリアファイルや缶バッチやTシャツやタオルや、さまざまなグッズを詰め込んでいた。 雪崩れてきては、押し戻す。そんなことをしても断ち切れる思いではないだろうに、不毛な作業だった。 「俺の青春をーっ!! 俺の青春を返せーっ!!」 うなだれるヒルマの背中に、無味乾燥なイセリナの言葉が突き刺さった。 「お前の青春は、おのれで捨てただけちゃうの。伝えたこともないのに、アホらしい。あんたの女ちゃうねんで」 彼女の鋭い言葉は、ぼくの心にも深々と刺さってしまった。
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