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兄は披露宴のずっと前に優奈と共に赴任先へ引っ越していて、以来、もう何年も優奈と会っていない。彼女がどんな生活を送っているのかも、兄がどう優奈に接しているのかもわからない。
「とうちゃん!」
「ん。どした」
俺の部屋のドアがノックされて、子供が小走りに俺のもとへ走ってくる。
「お前は本当に俺のことが好きだな」
「えへへー、とうちゃんすき!」
「あなた、珈琲のおかわりは」
「おう、頼むよ」
きっと優奈は、こんな家族を夢見ていたんだろう。
もしかしたら嫉妬されてしまうかもしれないな、なんて思いながら子供の頭を撫でる。
なあ、優奈。
あんたは今、幸せを生きているのかな。
それとも、俺に嫉妬してしまうような人生を送っているのかな。
いつか答え合わせをしてみたい。そのときに、俺はあんたに嫉妬したい。
そう、思うのはずるいだろうか。
そんなことを思いながら、俺は煙草を一口、吸った。
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