煙草の味

2/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「なら、いつかこの子も吸うわよ。ね」 「……まぁ」 「ほらぁ」  そうして、優奈は楽しそうに笑うのだ。  それから何度か顔を合わせ、その度に俺は優奈に惹かれていった。  兄と優奈の婚約を知らされたのは――――俺が、優奈に告白をしようと決めた日のことだった。 「どう、して」 「どうしてってなんだよ。ぼくと優奈が結婚するのがそんなに不満か?」 「不満って、いや、そうじゃねえだろ」 「じゃあ何だ」 「急すぎるだろ! どうして今なんだよ。俺だって」 「優奈が好きだった、ってか?」 「ぐ、……」 「残念だけどね、みぃ君。あたしは、水樹と結婚することにしたんだよ」 「だから、どうして」 「それは、あたしが決めること。そうでしょ」 「でも……」 「ごめんね、みぃ君」  俺はそのあと、部屋にひきこもった。夕飯も、食べなかった。  朝食を食べたかどうかもあやふやだ。  しばらくは、俺は茫然自失のまま過ごした。 「みぃ君」 「だから、別に何にもなりたくないって」  秋口の、披露宴。  その帰り道に、優奈は俺にそんなことを訊いてきた。 「……あたしはね。お嫁さんになりたかったの」 「今、なれてるじゃん」 「そうだよ。だから、夢が叶ったの」 「ならいいだろ」     
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!