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「なら、いつかこの子も吸うわよ。ね」
「……まぁ」
「ほらぁ」
そうして、優奈は楽しそうに笑うのだ。
それから何度か顔を合わせ、その度に俺は優奈に惹かれていった。
兄と優奈の婚約を知らされたのは――――俺が、優奈に告白をしようと決めた日のことだった。
「どう、して」
「どうしてってなんだよ。ぼくと優奈が結婚するのがそんなに不満か?」
「不満って、いや、そうじゃねえだろ」
「じゃあ何だ」
「急すぎるだろ! どうして今なんだよ。俺だって」
「優奈が好きだった、ってか?」
「ぐ、……」
「残念だけどね、みぃ君。あたしは、水樹と結婚することにしたんだよ」
「だから、どうして」
「それは、あたしが決めること。そうでしょ」
「でも……」
「ごめんね、みぃ君」
俺はそのあと、部屋にひきこもった。夕飯も、食べなかった。
朝食を食べたかどうかもあやふやだ。
しばらくは、俺は茫然自失のまま過ごした。
「みぃ君」
「だから、別に何にもなりたくないって」
秋口の、披露宴。
その帰り道に、優奈は俺にそんなことを訊いてきた。
「……あたしはね。お嫁さんになりたかったの」
「今、なれてるじゃん」
「そうだよ。だから、夢が叶ったの」
「ならいいだろ」
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