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耳元で
耳元で金属の跳ねる音がした。
ぼくの耳元にはいくつもピアスが付いていた。
茶色い髪。白い肌。それなりに整った顔立ち。時折、笑顔とともに見える八重歯。
ぼくはあらゆる「魅力」を持っていた。
「どう、してだよ」
きみはぼくに問うた。
「なにが?」
ぼくは質問に質問で答える。
「どうして俺はお前に勝てないんだよッ!」
また、耳元で金属の跳ねる音がした。ぼくのピアスが鳴る音だった。
胸ぐらを掴まれたまま、ぼくは浮薄に笑った。
「妬ましい?」
きみは黙ったままだ。
きっときみは、この八重歯さえも恨めしいだろうな。
そう考えると、もっともっと、笑いが漏れた。
きみはぼくに、何もかも、どんな種目でさえも勝つことができないでいた。
勉強。ぼくは毎度のごとくきみに大差をつけて勝ち、きみは万年二位だった。
運動。きみは決して劣っていたわけではない。否、常人よりも遥かに勝っていた。ただし、ぼくに負けた。
容姿。きみは確かに端麗だったけれども、女子に人気があるのは軽佻浮薄に拍車をかけた、軽くルーズなぼくの服装だった。
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