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夏休みの課題は、結局最終日の朝に彼女の家に駆け込んで終わらせた。一つも手を付けずに溜め込むなんて、どうかしていると呆れられたのは記憶に新しい。
「それはどうも。早く冬休みになれば良いのに」
「冬休みになったら、君はまた家に引きこもるじゃないか」
夏休みの予定を断り続けていたら、すっかり信用を失っているらしかった。
「寒いのだから仕方ない」
「夏にも同じようなことを言っていたね」
「そうだったかも」
休みの日は休むという考えを持たない彼女の行動力が、僕には理解出来なかった。
「寒くなれば肉まんが美味しいよ」
それは、彼女の冬の口癖だった。
お陰で、彼女の好きな食べ物はいやというほど覚えてしまった。
「君は気温に関係なく肉まん食べてるだろ。僕は餡まんが良いな」
「ええ、邪道だ!」
もう何回目が分からないやり取りに、笑いを堪えて考えを巡らせる。
「あ、鯛焼き。学校の裏の店の鯛焼きは何月になったら食べられるんだっけ」
「君は本当に甘党だね」
そう言って、今日話した食べ物の名前を上げ始める。
「あー、お腹空いた」
「来る途中にコンビニあったよ」
したり顔で笑う彼女を、気付かないふりして立ち上がる。
「行こう」
「こういうときだけ行動力あるよね。君は」
彼女の道案内で来た道を戻る。
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