追憶の旋律

14/39
前へ
/220ページ
次へ
このくらい、と言って細川さんが伝えてきた玩具の大きさは、せいぜいティッシュ箱くらいの大きさだった。 「その玩具が、頻繁に鳴るんです。多いときには一日に何度も。きっと、息子は私のことを恨んでいるのだと思うんです。母親の私がしっかりしていないせいで、満足に育ててあげられていなかったから」 細川さんの口元が、痛みにでも耐えるかのように歪む。 「玩具なんて、貰い物を除けばそのオルガンくらいしか与えてあげていませんんでしたし、おやつをねだられても、大抵は我慢しなさいばかりで、ろくに食べたいものも食べさせてあげられなかった。それどころか、五体満足な身体に産んであげることすらできない駄目な親でしたから、恨まれても、仕方がないのはわかっているんですけれど……」 「……そこまで罪悪感がありながら、息子の霊をどうにかしてほしいってのはどういう胸中で言ってるんだ? 恨まれても仕方ないのは承知の上で、それでも霊になった息子は気味が悪いとか考えての依頼か?」
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加