追憶の旋律

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この子から伝わってくる気の質が、細川さんの持つ気と類似している。 人間も幽霊も基本的に気は皆バラバラで同じものは存在しない。だけど、親子や親戚など血の繋がりがある者同士の場合はどことなく似ていることが多いのだ。 もちろん例外もあるけれど、細川さんと横にいる男の子の気はあたしなんかでもわかるくらいに似通っていて、悩む余地がないくらいだ。 それと、もう一つ言い切れるのがこの男の子からは悪霊の気配が“微塵も感じない”ということ。 細川さんの言い分では自分の息子に恨まれているみたいなことになっているけれど、その母親を見上げる男の子からは恨みはおろか、負の感情になり得るもの自体がほんのちょっぴりだって漂ってこない。 この子は、細川さんを敵視していない。むしろ真逆で、今でも細川さんを好いている。 では何故、頻繁に玩具の楽器を鳴らしてお母さんを困らせるような真似を続けているのか。
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