追憶の旋律

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「今日は何を買うんですか? また百円のお菓子買い漁ったりするんじゃないですよね?」 夏の終わりを認めまいとするように鳴き喚く蝉の声をBGMに聴きながら、あたしはそう問いを口にして、お互いの間に流れていた沈黙を破った。 「決めてねぇよ。レトルトのカレーでも食おうかとも思ってるけどな。なるべく腹持ちの良いもんあれば、それ買うけどよ」 穿き古したジーンズのポケットに手を突っ込みながら、気怠そうな声を返してくる純一さんを、あたしはため息をつく真似をしながらジト目で見つめる。 「そういう計画性の無さが駄目だって、もう何十回も言ってるんですけどね。目標立てません? ひとまず、今年中に最低いくら貯金するとか。今九月だから……四ヵ月で二十万円貯めるとかどうですか?」 「できるわけねぇだろ」 目を合わせることすらされず、即答で返されてしまった。 「何でですか? やってみなくちゃわかりませんよ。お仕事の依頼が入らないなら、簡単なバイトでも見つけてやったって良いんですし。まともな人間になるチャンスじゃないですか」
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