追憶の旋律

4/39
前へ
/220ページ
次へ
「……スミレイ、お前たまにさらっと失礼なこと言うよな。何だそのまともな人間になるチャンスってのは」 スミレイとは、純一さんがあたし菜野宮 菫(なのみや すむれ)の名前と幽霊をくっつけて作ったあだ名みたいなもので、あたしをからかうときによく言ってくる。 正直好きな呼ばれ方ではないけれど、言ってもやめてくれないので最近はもう諦めることにして受け流している。 「何って、純一さんかなりの駄目人間じゃないですか」 「ざけんな。ちゃんと自分で金稼いでるだろうが」 「そのお金の管理が杜撰すぎて、まともな生活が成り立ってないじゃないですか。たぶん、なかなかいませんよ? ご飯の買い出しで頻繁に百均行く人」 学生なら、お菓子を買いに立ち寄ることは多いだろうし、ちょっとした調味料の買い出しなら大人でも利用するのはわかる。 でもさすがに、メインの買い物で頻繁に来る場所とは違うだろう。 いつだったか、百円の芋羊羮を手に取って「今日の晩飯これにするか……」とボソボソ呟くのを聞いたときは、何かもう切なくなってかける言葉すら見つからなかった。 「どこで何を買おうが人の自由だろ。お前がわかってねぇだけで、案外利用客多い可能性だってあるはずだ」 そうぶっきらぼうに言葉を返してくる純一さんに、あたしは
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加