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依頼人は細川 君枝(ほそかわ きみえ)さんという、三十七歳の女性だった。
幸運と言うべきか、細川さんの住んでいるアパートは同じ町内にあるということで、メールをもらった翌日には実際に会うということで話がまとまっていた。
待ち合わせ場所となったのは、純一さんがたまに利用しているスーパーのフードコート。
場所を指定してきたのは相手側で、純一さんがそれに合わせるかたちとなった。
時刻は午後一時二十七分。
待ち合わせ時刻まで残り三分を切った段階でスーパーに到着した純一さんは、焦る様子を全く見せないまま、目的地へ歩を進めていた。
「純一さん、もう少し速く歩きませんか? 依頼人の人もう待ってると思いますよ」
普通の感覚なら、ここは走ってでも時間内に間に合わせようと誠意を見せる場面だ。
だけど、この純一さんに限ってはそんな配慮を持ち合わせていないのは、これまでの付き合いであたしも重々承知している。
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