追憶の旋律

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「焦る必要ねぇだろ。遅れたってせいぜい一分か二分だ。文句なんて言われねぇよ」 早速、予想通りの返答をされた。 こういう小さな部分での信頼を積み重ねることが意外と大事なんじゃないかと思うのに。 本当に、ここまで自分本位というか、我が強い人間はそうお目にかかれないのではと思ってしまう。 「……ふぅん。この時間帯でも、平日はあんま利用客いねぇな。スーパーに来て昼飯食おうって考える奴が少ねぇのか?」 やがて、前方に見えてきたフードコートを睨むようにして眺め、純一さんが独り言のように呟いた。 「知りませんよ、そんなこと。たまたまかもしれないじゃないですか。そんなことより、依頼人の人を見つけないと」 二十個くらいの丸テーブルが並ぶフードコートを見回しながら、あたしは依頼人と思われる人を探してみる。 お客さんの数は、九人だけ。決して多くはないので仕事の話をするには好都合だろう。
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