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目を閉じたのを確認してから再開されるハサミの音。
目を閉じているために耳が敏感になっているのか、さっきよりも髪が落ちていく音が鮮明に聞こえる。
でも目で見えない分まだ涙を充分堪えられる。
「失恋したから髪を切るなんて今時無いわよね??、考えが古くていけないわ」
だけどまたいつ泣き出しそうになるかわからないから、私は話をして誤魔化そうとした。
なのに、店長さんからの返事がない。
もう一度声をかけてみたけれどやっぱり返事はない。
集中しているのならこれ以上声をかけるのは申し訳ないし、何よりこれ以上返事がないのも堪え難いため、私も口を閉じた。
そうしている間にハサミの音は最初より近付いて来ていた。
髪が短くなっている証拠。
店長さんならきっと綺麗に仕上げてくれる。
私に似合うようにしてくれる。
短く量も減った髪は軽くなる。
家で髪を洗うとき三プッシュくらいしていたシャンプーがワンプッシュくらいで済むようになる。
髪を乾かす時間も大幅に短縮される。
ドライヤーを長時間当てた髪が傷んでいかないように月に一回ここに来て綺麗にしてもらっていたけど、それもきっと二、三ヶ月に一回に変わる。
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