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月に一度ここに来て髪を切り、量を減らす度に、必ず旦那は私の髪を頭のてっぺんから毛先まで撫でた。
家に帰ってからするならまだしも、私を迎えに来て、店長さんからの“お疲れ様でした”という出来上がりの合図の後、お会計もまだなのにいち早く私の髪を撫でていた。
ゆっくりゆっくりと髪を撫でて、そして毛先まで来るとその手はそのまま私の腕を撫でながら下りて行き、最後にぎゅっと私の手を包み込む。
そして必ず同じ言葉を口にする。
「やっぱり綺麗だ、君にはその真っ直ぐ艶やかな長い髪がよく似合う」
自分のことのように嬉しそうに私の目を見つめて笑う旦那。
店長さんに毎度“仲良しですね”と笑われるのがちょっとだけ恥ずかしかったけど、“そうだろう”と自信満々に答えていた旦那。
その姿に、私はこの人に愛されているということを、毎月のそれで自覚できた。
本当にこの人は永遠の愛の誓いを守ってくれているんだと思えた。
私が何で肩下十六センチなんて微妙なセンチ数にしているのかは、初めてここで旦那に出会ったときに言われた言葉が嬉しくて、家で何となく髪の長さを測ったから。
その時の長さがたまたま肩下十六センチだったから。
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