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ポタリ。
鏡の中の私の目からは雫が一粒。
「何で……私泣いてるの??……ショートこんなによく似合ってるのに……何で………何でっ……」
その後を追うようにポタリポタリと次々に雫が落ちていく。
その時、頭の中であの言葉が響いた。
“僕は君が死ぬまで君の傍で君だけを愛する、そんな永遠の愛を誓うよ“
「誓ってくれたのにっ」
指紋一つない綺麗な鏡に手を伸ばし、その短くなった髪に触れる。
「約束っ……したじゃないっ……」
ツッと音を立てて頭のてっぺんから指を滑らせると、すぐにその指は毛先に辿り着く。
その瞬間、私は崩れ落ちるようにして鏡に寄りかかった。
「どうして死んじゃったのよっ!!……」
突然の病気。
それでも必ず治して帰って来て一緒に生きると言ってくれた。
君との誓いを破ることはしないと、そう言ってくれた。
でもその言葉は叶わず、あの人はすぐにこの世からいなくなってしまった。
私が死ぬまで私の傍で私だけを愛するという永遠の愛の約束は、永遠に叶わないものになってしまった。
だけどあの人は約束を違えるつもりも、誓いを破る気もなかった。
それをわかっているから、余計に叶わない約束が悲しくて、仕方がなくて、私はあの人との思い出がたくさん詰まった長い髪を切ってしまおうと決めた。
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