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私の髪は六年前から変わらず肩下十六センチのロング。
いつもここに来て頼むのはその長さと量を減らしてもらうこと。
六年間その注文が変わったことはない。
でも……。
「いいえ、今回はこの髪、バッサリ切ってほしいの」
「えっ??」
初めてのその注文に鏡越しの店長さんが目を丸くした。
かと思うと、今度は眉間に皺を寄せて深刻そうな表情に。
「バッサリって……それは、ショートにするということですか??」
「ええ」
「どうして……」
普通美容師ならお客さんからの注文にそんな表情や言葉は使わない。
それが例え六年間繰り返してきたものとは全く違う注文が来たとしても。
驚きはするかもしれないけれど見るからに戸惑ったりはしないはず。
けれど店長さんがこれほどまでに目に見えて戸惑うのも無理はない。
「だってその長い髪は旦那さんの……」
「ええ、そうよ、六年間変わらず続けているこの長い髪は、私の旦那が好きなもの」
「それを横田さんはずっと守ってきたのに……どうして……」
私の旦那のこともこの髪の理由も知っている店長さんからしたら、ますます私の注文は訳がわからない様子。
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