髪を切る理由

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私と旦那が出会ったのは六年前、このお店で。 店長さん一人しかいないため接客できるのも一人のお客さんだけ。 だから毎月必ず美容院に通っていた私でさえ、このお店ではいつも他のお客さんと一緒になることはなく、自分以外にどんな人が来ているのかも知らなかった。 だけど通い始めて半年後くらいに、初めて自分以外のお客さんを目にした。 それは後に私の夫となる人。 その日は私が予約時間より二十分程遅刻してしまい、私の後に予約していた人の時間に被ってしまった。 最後の仕上げに入る段階で現れた私と同じ年齢くらいの男性のお客さんは、入口近くに置かれた椅子で自分の番が来るのを待っていた。 店長さんが頑張ってくれて二十分のうち半分の十分を取り戻してくれたけれど、結局男性の予約時間からもう半分の十分をオーバーしてしまい、待たせてしまった。 店長さんから“お疲れ様でした”という出来上がった合図をもらい、席を立った私はお会計を済ませた後、男性に声をかけた。 「お待たせしてしまってすみません」 今後こんなことは絶対に無いようにしようと固く誓いながら頭を下げると、ふいに髪に男性の手が触れた。 驚いて慌てて顔を上げると、目の前の男性もハッとしたように手を離した。 「すみませんっ!、あまりにも綺麗な髪だったものでっ……」
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