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それからずっと、楽しいことばかりで、嬉しいことばかりで、毎日が幸せで溢れていた。
この人の傍で私は一生愛されながら生きていける。
この人の永遠の愛は変わることはない。
ずっと。
そう思っていたのに……。
「お疲れ様です」
柔軟剤の向こう側から聞こえたその言葉に、私は現実に引き戻される。
「それじゃあまたこちらに移動お願いしますね」
そっと顔からタオルを外され、椅子が起き上がり、店長さんに案内されるように再び髪を切るための席へと移動。
椅子に座り鏡を見た瞬間、私は不思議な気持ちになった。
当たり前だけど、そこにはさっきとは違い髪が濡れた私が座っている。
けれど髪以外に私は自分の顔を鏡で見て不思議に思った。
前にここに来た時、私こんなにやつれたような顔をしていたかしら??
「さて、いよいよ切っていきますよ」
店長さんがいつも腰に提げているシザーケースからハサミを取り出して構える。
その声にハッとして慌てたように頷いてしまうと、ショートにすることに迷いが生じていると思ったのか、店長さんの手が少しだけ下がる。
「バッサリ切ってね、お願い」
けれどそれを止めるように普段より大きな声でそう伝える。
「わかりました」
私の声に一瞬目を見開いた店長さん。
でもすぐにニッコリ笑って頷いた。
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