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「では」
シャキン。
パラ。
シャキンシャキン。
パラパラ。
シャキンシャキンシャキン。
パラパラパラ。
「っ……」
耳元で聞こえるその音に合わせて、目の前の私の髪が落ちていく。
長い髪が少しずつ短くなっていく。
あんなに毎月通って大切にしていた長い髪が短くなっていく。
六年間変わりはしなかった長い髪が短くなっていく。
短く……なっていく……。
目の前で姿を変えていく髪に、どんどんと胸が苦しくなってくる。
そして髪が落ちていくのと同じ速さで目が熱くなってくる。
今にも泣いてしまいそうだということは自分が一番よくわかる。
だけど、急に泣き出したりしたら店長さんを驚かせてしまう。
そのせいで途中で髪を切るのを止められてしまうなんて、そんな中途半端なことだけはしたくない。
だから私は我慢する。
決して涙が落ちてしまわないように、目にグッと強く力を込めて。
「横田さん」
けれど頭上から聞こえた優しく囁くような声で私は自分がいつの間にか俯いてしまっていたことに気付いた。
「ごめんなさい!下を向かれていたんじゃ切りづらいわよね!」
慌てて何でもないふりをして顔を上げる。
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