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「目を瞑っていてくれませんか??」
けれどそんな私に向けて突然謎の指示。
訳がわからず首を傾げると、店長さんはハサミを持つ手を止めた。
「本当はある程度切ってからどんな髪型にするか相談するつもりでした。でも、僕に全部任せていただけませんか??、せっかく初めてのショートなら途中経過は見ずに出来上がるのを楽しみに待つのも良いんじゃないかと思って」
確かに人生で一度もショートにしたことのない私は、正直どんな髪型が良いかと尋ねられてもわからない。
それなら店長さんにお任せした方が綺麗に仕上げてくれるはず。
それに、目を瞑っている方が、まだ涙を堪えられるかもしれない。
「でも……」
でも、本当に良いのか、答えに困ってしまう。
「大丈夫ですよ」
そんな私に店長さんはさっき以上に優しい声で言った。
「必ず横田さんに似合う髪型にしますから」
「……それじゃあ、お願いしようかしら」
その声と言葉で理解した。
この人は私が泣きそうになっていたことに気付いてそんなことを言ってくれたんだ。
“店長さんありがとう”
心の中でそうお礼を言いながら、店長さんの言葉に素直に甘え、私は目を閉じた。
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