桃色の石

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で友人に尋ねたら「そっちの方が安く行けるときがあるからに決まってるやろ」と当然のように返されてしまったが、さすがいかに安く済ませるかにかけては超一流な大阪人だと素直に尊敬の念を抱いた。それからは、僕も特に急いでいない限りはきっぷで電車に乗るようになった。 改札を通って跨線橋を渡り、なんば方面ゆきホームである2番のりばへと到着する。時刻表を確認すると、次の電車は普通なんばゆきのようだ。少し待っていると、アナウンスとともに電車が滑り込み、目の前に止まった。僕はそれに乗り込み、泉佐野駅で空港線に乗り換え、りんくうマーブルビーチにほど近いりんくうタウン駅を目指した。 パラソルひとつない、見渡す限り石浜に接するコンクリートの階段にじっと座っていると、帽子の隙間からじんわりと汗が滲み出てくる。体を潤すために買ったスポーツドリンクはもう2本目だ。それなりに熱中症対策をしてきたつもりだったが、やはり日向ぼっこをするにはあまりにも季節外れだった。そもそも「恋人の聖地」といわれる場所で男が1人寂しく物思いに耽っているなど、客観的に見れば実に妙だ。 「ちょっと無謀だったかも……」 頭がぼんやりしてきた。このまま
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