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だとさすがに倒れてしまう。とりあえずどこか涼める所を探そうと立ち上がったその時、白いノースリーブのワンピースを着た少女が、階段の少し離れた所で1人ぽつんと腰かけているのが見えた。つばの大きな麦わら帽子を海風に靡かせながら水平線を眺めるその姿は、美しくも儚い鳥のようだ。
夏らしい真っ青な空に真っ白なワンピースが映え、肩まで伸びる栗色の髪に隠された横顔は遠くから見ても可憐であることがよくわかる。表情はあまり明るいものとはいえない感じがするが、その憂いた瞳にはいったい何が――
「……って待て待て、なに他人のことをじろじろ見てるんだ。まるで不審者じゃないか」
ぼやきながら頭を抱える。だんだん思考回路が働かなくなってきた。本当に熱中症になりかけているのかもしれない。残り少なくなったスポーツドリンクを一気に飲み干す。大丈夫、あともう1本ある。
「こんにちは」
突然頭上から降ってきた声に思わずむせた。振り向くと先ほどまで階段に腰かけていた少女が僕をにこやかに見下ろしている。
「あ、まだ朝やから『こんにちは』やなくて『おはよう』やね」
楽しそうにクスクスと笑うその子は後ろ手を組んで僕の様子をうかがっている
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