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ようだった。どう返そうか思案していると、急に彼女の顔が僕のそれと同じ高さになった。驚いて少しのけぞる僕を、焦げ茶色の純粋な瞳がじっと見つめる。
「あ、あの……」
どうしよう、さっき不審者のごとくじろじろ見ていたのがバレたのだろうか。それとも、単に今朝食べた海苔が口元についているだけなのか。
あれこれいらないことまで考えそうになっていると、これまた急に彼女が破顔した。
「キミ、綺麗な目してんなあ」
そんなことを言われたのは初めてだった。そもそも、こんな風にまじまじと目を覗き込まれることなんて、恋人同士とかでなければ普通はない。少女はなおも僕の目を見つめ続ける。彼女の瞳に僕の呆けた顔が映っている。他人の目に映った自分の顔を眺めるというのはなんとも不思議で奇妙な感覚だ。じゃなくて。
「ぼ、僕に何か用かな。キミのことをずっと見てたのが気に障ったのなら謝るよ。まあ普通は嫌だよね。ごめんね」
言い訳がましく捲し立ててしまったが、ようは先ほどの自分の行動を振り返ったらとても恥ずかしかったというだけである。
なんとなく居心地が悪くなり、僕は立ち上がると足早にその場を去った。少女が未だににこにこと笑っているのが
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