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乗ってもいいですか
新学年になって知り合ったクラスメイトに、結構なオカルトマニアがいた。
学校の七不思議とか都市伝説にやたらと詳しくて、俺はそのテの話には興味がない系だったけど、いかにも雰囲気たっぷりに語られるそいつの話だけは面白くて、他の友達連中と一緒にオカルト話に耳を傾けていた。
とはいえ、聞いた話を信じていた訳じゃない。あくまでありえないネタとして楽しんでいただけだ。
ありそうだけれどありえない話。だからその場では楽しく聞くけれど、すぐ忘却の彼方に流されていった。
でもさっき、たまたま聞いた話を思い出したんだ。
他に用事がある親に頼まれ、俺は、同じ市内にある親戚の家に届け物をした。
品物を渡すだけの用事はすぐに済み、高層マンションの上の方の階から帰ろうとエレベーターに乗った瞬間、俺は、以前聞いたエレベーターにまつわる都市伝説を思い出した。
確か聞いた話では、エレベーターに乗ったらまず四階を押して、到着したら開くのボタンを四十四秒押し続ける。その後扉が自然に閉まるのを待ったら、決められた順に他の階のボタンを押していき、最後にまた四階に戻るようにする。すると四階に着いても扉は開かず、到着から四十四秒後、非常用ボタン上のスピーカーから『そのエレベーターに乗ってもいいですか? よかったら扉を開けて下さい』という声が聞こえる。
そこまでははっきり覚えているが、確かまだ続きがあったような。でも話の流れ的に、そんな怪しげな声が聞こえてきたらそれが怪談のオチだろう。だから無理に思い出さなくてもいいか。というか、そもそもこの話自体眉唾だし。
楽しく聞いてはいたものの、話自体は信じてない。それでもちょっとだけ『もしや』の気持ちもあるから、それを試せる状況に好奇心が溢れた。
四階での四十四秒をクリアした後、決められた通りに他の階を指定することになっているが、普段は高層ビルなんて縁がないから、気にはなっても試すことはできなかった。でもこの高層マンションのエレベーターでなら、指定の階を総て押してあの話の真偽を確かめることができる。
まずは四階へ。扉が開いたら開くのボタンを押して、スマホのストップウオッチ機能できっかり四十四秒。扉が閉まるのを待ってから、聞いていた通りにいくつかの階のボタンを押す。その最後にもう一度四階。
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