後悔はしたくない

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 初めての集会の日だった。彼は身に纏った鎧に返り血を拭いもせずに出席してきた。彼曰く、私に反発する者達が水面下で謀反を企てていたのでそれを阻止したと。貧民区画は治安もさる事ながら政敵や裏社会の者まで跳梁跋扈し大層危険なのだろう。しかしどういった訳か、彼の心は殺伐とした環境に折れる事なく人に近づいていた。私達は安心し、そしてそれを喜んだ。私達は外部からの刺激が彼の心を取り戻すのだと確信した。彼にそのまま貧民区画の治安維持を命じると彼は不満も言わずに踵を返し室内から出ていった。  それから暫くは同じ様な報告だけを彼の口から聞く様になる。彼の変化は代わり映えしない物だったけれど、私は彼の姿を定期的に見れるだけで満足だった。しかし同じ様に街を巡回していたファラからある報告を受けて事態は急転する事となる。なんと彼は人類の天敵である吸血鬼を保護したというのだ。  吸血鬼――人の生き血を啜る化け物。  私はファラから報告を受けた後の直近の集会で彼にその事を問い質した。しかし彼の返答は驚くべき物だった。 「ここは規律都市であり、俺は《均衡》だ。法を守っている者を裁く事は出来ないし、多様性の観点からも処刑はしなくて良いと判断しただけだ」  彼は宣言するように強い口調でそう言った。  その時まで私は忘れていた。彼は私の下僕ではなくあくまでもこの街に仕えている存在だという事を。勿論、街に意志などある訳はないので代わりに大領主である者の命令が彼にとっての任務になるだが、それと彼の使命は別なのだ。  私は焦った。     
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