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ある時の事である。私の下僕の中でも特に人好きする者達が集まって彼を取り囲んで騒いでいるのを見掛けたのだが、その時私はつい「少し騒がしいね」と彼女達に向かって言ってしまったのだ。彼女達は普段そんな事を言われないから凄く驚いた表情をしていた。それはそうだろう私だってそんな事を言う自分自身に驚いていたのだから。彼が他の人達と親しく話している訳でない。ただ和気藹々とした雰囲気の直中に居る事が何となく不快になっただけの事なのだ。そんな私の自分ですら分からない妙な感情に答えをくれたのはファラだった。
「貴女の様な方でも嫉妬はするのですね」
あの時のファラはそんな事を言いながら少しふくれっ面になって私を睨んでいた。嫉妬? 私は彼や周りの下僕達に嫉妬しているのだろうか。他人が見て分かるくらいに?
知識としては知っていたけれど、それを実際自分が抱くとなると中々嫌な感情である。誰が悪いという訳でもないのに、彼に関わる人々に悪感情を向けるのは、まるで自分が器の小さい愚か者の様になった錯覚を覚えてしまう。ぬぐい去る事のできない事故嫌悪と不安が日増しに強くなっていくのだ。そんな事が嫌でたまらなくなった私は彼の姿が自分の前にあるから悪いのだと短絡的な考えをしてしまい、彼に新たな任務を与えて私の護衛から外したのだった。
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