後悔はしたくない

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 私はそんな事を考えてしまうと少し沈静化した憤怒が再び沸き上がり始めた。人の心を取り戻して欲しいはずなのに、それが見ず知らずの他人に向けられる事が何より気に食わないのだ。このままでは彼がどこの馬の骨とも分からない女の下へと行ってしまう。そんな焦燥に駆られた私は彼にまた新しい命令を与えた。街の外れにある貧民区画を拠点とし、そこで絶対の治安を保持せよと。  絶対の治安……つまりは完全な法の遵守。私が大領主の座に着いた時、私の事を排斥しようとした者達が陰で行っていた悪行を下僕達を利用して捏造し、白日の下晒したのだ。前もって定めた法の下に反乱分子の処刑を行ったのだ。恐怖政治と言われても仕方のない事かもしれない。しかし政界で生きてきた狸爺達が作り上げてきた既得権益を破壊し新たな秩序を作るにはそうするしかなかったのだ。暴君でなければ改革は成し得ないとは誰の言葉だっったか。 「君は僕から与えられた仕事をサボタージュしている気はないんだね?」 「ああ」 「であれば新しく君に与える任務も全力で励んでくれるのかい?」 「ああ」 「ならば粉骨砕身をもって職務に打ち込んでくれ」  彼の新しい任務――貧民区画の治安維持。  そこであれば着飾った婦人も色気付いた街娘もいない。彼に言い寄る女など誰一人として居はしない。居るのはせいぜいやせ細った小汚ならしい浮浪児か犯罪者位だろう。彼の任務遂行能力に信頼もしていた私は、安心して彼を貧民区画へと送り込んだ。それでも不安が残っていたし、彼の姿を見たかった私は定期集会という大義名分を用意して彼に欠かさず参加するよう命じた。     
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