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カチャカチャ、ジー。ヴー…。カチャカチャ。
最寄りの駅から徒歩30分。築40年のアパートの一室1K(風呂トイレ付き)が僕の城。カーテンが常に閉めきられ、よほどの事がない限り、この城に太陽の光が届くことはない。
カチャカチャ、ジー…。カチャカチャ。
「チッ、なんだよ。今は回復だろ…何1人で突っ走ってんだよ!コイツ!」
薄暗い部屋に、パソコンのモーター音とキーボードの叩く音、そして時おりヘッドホンをした僕の独り言が響く。
唯一の光は、広大な大地とモンスターがうようよと歩き回る世界が、映し出されているパソコン画面だけ。
僕以外の人間も居ない。
でも、孤独では無い。草原や荒野をを一緒に冒険してくれる友人が100人以上いるから、寂しさは感じない。
この城の中だけが、僕が僕らしくいられる唯一の場所。
ここが僕の居場所。
僕の世界の全て。
クスクス…クスクス…
「なあ、アイツさぁ…。」
クスクス…クスクス…
「何あれ、だっさーい。」
背後から僕をあざけ笑う声が聞こえる。
振り替えると、中学の時の制服をまとった、沢山の人間が悪意に満ちた表情で、ニヤニヤしながら僕を見ている。
僕はそいつらを睨み付けて、大声で怒鳴ろうとするのに、体が言うことを聞かない。口から漏れるのは、微かな息の吐く音。
『嫌だ…この感じ。自分が心がコアから崩れていくような、この感じ。』
苛立ちと恐怖心の中、焦りもがいている僕の前に、親友があざけ笑う集団の中から背中を押され、祭り上げられるように出くる。
『ああ、良かった。助けてよ。体か動かないんだ。声も出ないんだ…』
けれど親友は手を拳にし強く握って、顔は下を向き2、3度、目だけを動かし、チラチラと僕の様子を伺うだけだ。
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