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『なあ、助けて…』
背後のあざけ笑う集団は、せっつくように親友の背中を何度も小突いた。
『やめろ!やめろよ!そいつは僕の親友なんだ!』
僕は体を動かそうと、必死でもがくがびくともしてくれない。
『動け!動けよ!』
そして彼は、意を決したかのように顔を上げ、大きく息を吸い込み、人が変わったように僕を睨み付けた。
「お前なんか、友達じゃない!お…お前なんか…」
『おい、な…何言ってるんだよ…昨日まで笑ってたじゃんか…』
心臓の音が、ボリュームを上げる。
彼は、僕を睨み続けた。
「…お前なんか、死ねばいいのに。」
そう、彼が言い放ったとたんに、彼の背後にいた奴らが、冷たい声で大きく笑い始めた。
失望感と悲壮感が津波のように押し寄せ、オレの中をグチャグチャに破壊していくのに、僕は何もできないまま、その場に立ち尽くす。
『…一体…僕が、何をしたんだよ?』
ピピピ!ピピピ!ピピピ!ピピピ!
まだ夜が明けていない、真っ暗い部屋に、規則的な電子音が鳴り響く。
目に入ってきたのは、暗闇にうっすらと見える見慣れた天井で、今のが夢だったとわかった。
「また…かよ。」
中学を出てからだから、もう何年になるだろう。僕は不定期にこの夢を見ては最悪の目覚めかたをする事を繰り返していた。
夢…っていうか、実際は僕の過去…なのだけれど。
僕に対する世に言うイジメが始まったのは、小3の時だ。
当時、オレは転校して来たばかりと言うこともあって、クラスで浮いた存在だった。
でも、ある日一人の女子が頻繁に話しかけて来てくれるようになって、徐々に友達ができだした。
でもある日の朝、突然クラス全員からの無視が始まった。
原因は、僕がみんなの陰口を本人がいないとこで言っている、という噂をクラスの中心的な存在だった「高橋」という男子が流したことだった。
もちろん僕はそんな覚えはないし、懸命に否定したけれど、誰にも信じてもらえずにいたところに、無神経な担任がその事をホームルームで取り上げ、たいして僕の話も聞かずに、僕を悪者と決めつけ、クラス全員の前で言いやがったんだ。
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