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「何でお前、俺のことそんなに毛嫌いしてるの?」
「好きじゃないといけない理由はないと思うけど。」
腑に落ちないようだ。渡様の美しい面立ちが崩れる。ので、ひとつ長い息を吐くと、私はこれまでのイライラをぶつけるように吐き出した。
「私はね!一番でなきゃ嫌なの!気が済まないの!中学ではずっと一位をキープしてきたの!なのにあんたが現れたおかげで、二位に転落よ!どんなに努力しても報われない!そう感じさせられるの!だから嫌いなの!どう?これで満足?わかったらさっさと帰りなさいよ!目障りなのよ!!」
はあっ、はあっ、と肩で息をして渡様を睨みつけると、
「くっ、はははははは。」
何と渡様はお腹を抱えて笑いだした。莫迦にされているとしか思えない。モヤモヤとした怒りがお腹の底から湧き上がってきたその時だ。
「阿保だな。佐倉。」
「は?」
「お前は高校入学してから、ずっと一番だよ。」
頭上に疑問符が浮く。
「何、言ってるの?一番じゃなくて二番じゃない。嫌味?莫迦なの!?」
「そうじゃなくて…。」
すると矢庭に、渡様に抱き締められた。突然のことで思考回路がショートする。鼓動がドクンドクンと、強く脈を打つ。
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