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「タブレットは諦めよう。筆ペンもいらない。そうだな……祝いの酒をくれないか? 街のみんなと一緒に飲んで騒げるように、大量の酒をくれ」
「酒? 私は下戸なので酒を持っていません。スミなら無限に吐けますよ。墨汁の注ぎ足しにどうですか? ほらっ、ほらっ!」
……
……
タコが嬉しそうに墨を吐いている。
部屋が黒く染まって行った。このタコ、何をしに来たんだ?
「……もう何もいらないから、用が済んだのなら帰ってくれ」
再び神はショボンとした。
「先日、友達とコンビニに入りました。甘い物が食べたくなった私はどら焼きをレジに持って行きます。どら焼きは127円。私の財布には万札(車の整備用)が一枚と小銭が125円。友達に『2円くれ』と言ったら、ドラ〇もんのモノマネをしたらやるよと言われました。レジの前で臆す事無く、私は『僕ドラ〇もん。の〇太君、2円ちょうだい』と言ったのに、『ぎゃはははは……あっ、悪い。俺も万札しかないや』と言われました。店員の女の子は口を抑え、必死に笑いを堪え……」
「なんの話だよ!? お前はお笑い芸人なのか!? もういいから、凄い能力を持ってるなら自分に使えよ!」
「自分には使えないのです。皆さんを幸せにする能力なので……」
「……そうなのか? すまない。その気持ちだけで十分だ。お前にもやる事があるのだろう? 私に時間を使わなくても良いんだぞ」
これ以上、関わり合うのは危険だ。私は厳格な態度を崩さず、少しだけ優しさを見せてタコを追い返そうとした。
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