1 誕生

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1 誕生

1  満ち足りた暖かい場所。  潮騒のような柔らかな音。  頼もしい、ゆっくりした脈動。  呼吸する必要もなく、ただ存在し、揺蕩(たゆた)って、夢を見ている。  胎生の生き物の、体内にいるのだ。  そう、これは、生まれる前の記憶。    この世界に転生するために、小さな生き物の、小さな胎に、俺は融合したのだ。  元の身体は大きく、強く、膨大な魔力を持っていたが、温気に包まれ、夢見心地の中で、もうその姿も、記憶も、おぼろげだ。  まあ、いいか。  この体にすべてを預けて、休むとしよう。  ゆっくり魔力を溜め込んで、また新しく始めるのだ。  しかし、腹の管で母体と繋がっているのだが、流れ込んでくる魔力があまりにも少ない。  生まれたら早急に、魔力の溜まりを見つけねば・・・  そう、この事は覚えておかねば・・・  ・・・・・・・・・  潮騒の、流れが変わったようだ。  脈動が早くなっている。  身体を包む膜状のものが、何度も収縮を繰り返す。  母体から切り離される時が来たようだ。  押し寄せる流れ。激しい収縮。下方へ押しやられる。  収縮、痙攣。収縮、痙攣。そして、収縮!  狭い場所から激しく押し出された。  さあ!新しい世界だ!
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