2 十日目

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「その仔犬をゆっくりおろしなさい。怖がらず、ゆっくり」  同じくらいの少年が静かに横に並ぶ。 「若君、どうかそれをこちらへ。  振り向かず、そのまま静かに下がってください」  俺を手放したフランツと呼ばれた少年が下がると、母は歯を収め、少し警戒を解いた。 「その犬を殺「なんと素晴らしい母性でしょうね」」  フランツと、大人の女らしい声が被る。 「だって母上!見ていたでしょう!  あれが私にかみつこうとしたのを!」 「母の愛はすべてに勝るという事ですよ。覚えておおきなさい。  子を守ろうとする女性にさからうものではないわ。  ね。あなた」  もう一人の大人の腕を取る。 「母上の言うとおりだぞ、フランツ。  おいで。誕生祝いは別のものを望むがいい」  周囲の皆がほっと息を吐いた。 「よかったな」  俺を抱いた少年がささやく。  わかったからおろしてくれ。抱かれるのは好きじゃない。  しかし受難は終わらなかった。 「ねこしゃ!」  幼い声と共に引きはがされ、ぎゅうと抱きしめられた。 『ぐえっ』  少年はあわてて母の様子を伺うが、母はちょっと困った顔で首を傾げるだけ。  離れていこうとした一団が、立ち止まる。  振り向いたフランツの顔が怒りに歪んでいる。     
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