リトライ

15/135
前へ
/158ページ
次へ
そう思ったところで、ハッと気がついた。 慌てて、引き出しから前の二通も取り出して見てみる。 誰が見ても、誰が読んでも、誰宛のものかわからないし、誰が書いたものかもわからない手紙になっていた。 「か、賢い……」 思わずそう言った後、言葉を失った。 まあ、もしかしたら、相手は、誰でもいいのかもしれない。 そう思ったら、なんだかどうでもよくなってきた。 誰かわからないけど、時々、手紙が届く。 そんな感じで流してやればいいか。 誰にも言えない思いを抱えている場合もあるし、それを吐き出す相手が、たまたま私だったのか、それとも、他の誰かと間違えているのか? わからない以上、詮索はやめた。 その後、ほぼ毎日だが、それでも不定期で手紙が入るようになった。 そして、十通目が届いた時に、さらに、頭を悩ませる事になる。
/158ページ

最初のコメントを投稿しよう!

997人が本棚に入れています
本棚に追加