リトライ

17/135
前へ
/158ページ
次へ
偶然だが、同じレポート用紙。 特にこだわりのものではない。 購買部でも売っているし、帰りの雑貨店にも売っていて、無くなった時には、すぐにどこでも調達できるものだ。 それに、同じように書いてみた。 『手紙を出す相手を、間違えてはいませんか? 今までの内容は、誰にも話していませんし、見せてもいません。 今後も誰にも話しません』 これでいい。 これで、きっと席を確認するだろう。 ただし、届けばだけど。 私は、これを、同じハガキサイズの茶封筒に入れて準備した。 翌朝、暑くなる前のまだ少しだけヒンヤリした空気の中、自転車で駆け抜ける。 目の前に見えてきたイチョウの樹に目が留まった。 本当だ。 小さな若葉があちこちに生えて来ている。 普段なら通学に必死な時間で、わき目もふらず進む道に、わずかだけど、ホッとする時間が生まれた。
/158ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1015人が本棚に入れています
本棚に追加