リトライ

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「藤倉ぁー、課題やって来た?」 席に着くなり言われた、そんな朝の、田山のひと言で一変した。 「えっ、次の授業後の放課後提出だよね?」 「だから、今日の授業後だろ?」 「えっ……」 「え?じゃねぇよ。藤倉、まさかお前……」 さすがの楽天家田山でさえ、顔色が変わってゆく。 私は、ゴクリと、喉を鳴らした。 数学の課題プリントの提出が、今日の放課後までになっていたのだ。 その枚数、十五枚。 慌ててリュックを探すが、見つからない。 三分の二ほどは解き終わっている。 でも、プリントを家に置いて来た。 取りに帰る暇は無いし、いずれにせよ三分の一は白紙。 昨日の夜、何してたんだろ? 記憶の糸を辿る。 そこには、すっかり課題を忘れ、浮かれポンチな自分のマヌケな姿が甦った。
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