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「忘れたのか?お前にしては珍しいな」
不思議顔の田山が言うように、几帳面な私は基本忘れる事なんて今まで無かった。
でも、今日はイレギュラーだ。
「うそ……忘れてた!」
「前見てみろよ」
田山に言われて、そのまま前の教卓の下に走り込んだ。
教卓の下には、余りのプリントが無造作に重ねられているからだ。
余りのプリントをパラパラとめくって探す。
「あ……あった」
ラッキーなことに、数学の十五枚綴りのプリントの余りが見つかった。
「田山先生、プリント見せてください」
もう丁寧に解いている場合ではない私は、席に戻るなり田山に懇願する。
「なんだ?藤倉、気持悪りぃ」
「お願いします」
「だったら、桐谷に借りた方がいいんじゃね?」
「えっ……」
その名前を聞いて、言葉に詰まった。
「なあ、桐……」
呼びかけた田山の前に回り込み、必死に抑え込む。
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