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「あーーー、今日の日直ーーー」
伸ばし気味で言いながら、黒板を目で追い、誰かを確認している。
「あーーー、じゃあーーー、そうだなぁ。
藤倉、プリント配ってもらうから後で職員室に取りに来い」
今、名前見て選んだだろう!
微妙な間が、否が応でもそう思わせる。
成績優秀で学校の宝である桐谷君ではなく、雑用は私かよ。ザビエルのヤツ!
「はーい」
悔しいけれど、この場合の人選は仕方ない。私は、素直に返事をした。
二限終わりの休憩時間に、ペンを置いて、立ち上がる。
「藤倉さんいいよ。僕が行く」
「えっ……」
いつも背中しか見えない桐谷君が、こちらを向いて立っていた。
久しぶりに呼ばれた名前と、私だけに向けられた笑顔。
そのすべてに釘付けになった。
「わ、悪いよ。呼ばれたの私だし」
「いいよ。藤倉さん女の子だし、力仕事は僕がするよ。それに、今は、それどころじゃないでしょ」
女の子と言われた事に驚き、さらに、プリントに目を向けられて、恥ずかしさは一気に大気圏を突破したようだった。
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