1000人が本棚に入れています
本棚に追加
「ありがとう」
戻って来た桐谷君に声を掛ける。
その手には、日誌があった。
「どういたしまして」
「ごめんね、重かったでしょう?」
「ザビエルも、容赦ないよな」
「そうだね。あ、私、日誌書きます」
「いいの?」
「うん、力仕事のお返しに」
「今日は、書いてばかりみたいだけど、大丈夫?」
「なはは……」
「珍しいね、藤倉さんが忘れるなんて」
クスリと笑う顔が輝いて見える。
そして、思いがけず気に掛けてくれている事、見ていてくれたことにドキッとした。
「お恥ずかしい限りです」
「じゃあ、お願いするよ」
「うん」
手渡された日誌を受け取る。
余韻に浸る暇はなかったけど、久しぶりなのに、意外にも、軽快に話せたことにホッとした。
とりあえず、必死にプリントを書き写す。
無事に、帰りのホームルームまでには出来上がった。
最初のコメントを投稿しよう!