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渡り廊下を通りながら、窓から見える西の空に足を止めた。
自分の名前と同じ、茜色の空に変わってゆく姿を見つめる。
ふっと浮かんだ桐谷君の微笑みに、自然と私の顔まで笑顔になっていた。
二階の渡り廊下から見下ろすと、下の自転車置き場が見える。
そこには、絵里ちゃんが、付き合っている同じクラスの山崎君と一緒に帰ろうとしている姿が見えた。
野暮だと思いながらも、窓を開けて声を掛ける。
「絵里ちゃんまたねー」
「茜、今終わり?」
「うん」
「お疲れー、またねー」
「藤倉さん、今日はお疲れ」
「またね」
絵里ちゃんと一緒に、山崎君もひと声かけて手を振ってくれた。
その様子を見送りながら、大きな窓をエイッと閉める。
同じ高三でありながら、堂々と充実した日々を送っている絵里ちゃん。
羨ましいのひと言に尽きた。
神さまは、不公平だ。
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