1000人が本棚に入れています
本棚に追加
さて、帰ろう。
渡り廊下にキュッキュッと響く上靴の音を聞きながら、一人てくてく歩く。
誰もいないことをいい事に、買ったままポケットに入れていたチョコレートの小袋を引っ張り出して、一粒口に含んだ。
まったりと溶けだすチョコが、疲れを癒す。
「こんな事なら、リュック持って来とけばよかった。かえって二度手間だった」
階段をのぼりながら、ぼやく。
まさか、職員室にザビエルがいないなんて想定外だった。
すっかり誰もいなくなった廊下や教室を横目に、静けさを感じながら歩く。
四階の一番奥の教室に戻ると、たった一人残った男子生徒の背中が目に飛び込んできた。
すっかり気を許していたところに、緊張感が走る。
入口手前で、足が止まった。
桐谷君だ。
勉強をしている。
いつもなら、この時間は自習室にいるはずなのに、今日はなぜか教室にいる。
本来なら、私も自習室に向かうところだったが、今日は疲れたので帰ろうと思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!