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こんな日に限って、誰もいない教室に、ふたり。
私は、ふうっと息を吐き出して、邪魔しないように静かに席に着いた。
とはいえ、桐谷君の後ろの席だけど。
トントンと小さく音を立てながらリュックに教科書を詰める。
「お疲れさま」
顔を上げると、一年生の時と同じ姿で、桐谷君が横座りして私を見ていた。
「お疲れさま。今日は、ありがとう」
「こちらこそ、日誌ありがとう」
「日誌なんて適当だよ」
そのまま、静けさが広がる。
会話が、続かない。
「あ、これ、よかったら」
私は、机に置いていたチョコを差し出した。
「ありがとう」
普段なら男子ばかりで、暑苦しく、狭く感じる教室が、ふたりだととても広い。
その上、前後の席では、密着感を感じるというか、恥ずかしい。
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