淡い思い出

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「あー美味しかったっ。ご馳走様でした」 食事を終えて手を合わせている母に、遥は嬉しそうに笑みを浮かべた。 「お粗末さまでした」 「いやいや、遥…本当に料理上手になったよねっ。もうお母さんより料理のレパートリーも多いんじゃない?」 「流石にそこまでじゃないよ」 謙遜しつつも褒めてくれるのは素直に嬉しくて、照れ隠しに食べ終えた食器を重ね始める。 すると、それを見ていた母親がすかさず「水につけて置いてくれれば私が洗うからね」と横から口を出した。 夕飯の片付けは、母がやってくれることが多いのだ。 「でも、本当にありがたいよ。こんなに良い子に育ってくれて、私は幸せ者だね」 感慨深げに話す母に「そんな、オーバーだよ」と笑いながら立ち上がると、食器を流しへと運んでゆく。 「ね、遥。もうすぐ誕生日だねっ。プレゼント、何が良い?」 身を乗り出すようにして聞いて来る母親に、遥は再びテーブルに着くと笑った。 「別にプレゼントとか特に良いよ。ケーキさえ買って来てくれれば、それでオッケー」 「またー。誕生日ぐらい遠慮しないのっ。洋服とかはどう?今度一緒に見に行こっか」 その言葉に、遥は嬉しくなった。 「買い物?行きたいっ」 母と買い物へ行くなんて久し振りだ。 「じゃあ、決まりねっ。今週末行こうよ。帰りにご飯でも食べてこよ」 「うんっ」 嬉しくて早速テーブルの端に置いていたスマホのスケジュールアプリに予定を打ち込んでおく。
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