動き始めた時間

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『でもさ、オレ…アオのことも大切だし、ハルカのことも大切なんだ。大切な二人がこのままオレのせいで、はなればなれになっちゃうのはイヤだ。でも、アオにどれだけ言ってもすなおに言うことなんか聞かないし。だから、この手紙を書くことにしたんだ。(我ながら名案だぜ!)』 その文章の後に『ニヤリ』と笑った顔が小さく描いてある。 (でも、名案って…どういう意味…?) そう思ったところで、次に続く言葉に目を通した遥は小さく息を呑んだ。 『この手紙を今ハルカが読んでるってことは、アオに会えたんだろ?』 (まさか…。その為に…?) その後に続いている文面に目を通しながらも、遥は徐々に溢れる涙に視界をにじませた。 ユウくんは凄い。 自分がどんなに辛い闘病生活を送っていようとも、それを微塵にも出さず。泣き言も言わず。 出会った頃のユウくんと変わらず、明るいままで。 私と蒼くんの心配なんかをして…。 とうとう堪えきれずに零れだした涙に。 泣いているのに気付いた蒼が、心配気に声を掛けてくる。 「大丈夫か?遥…」 遥はハンカチを瞼に当てながら、こくこくと頷いた。 こうして蒼くんが隣にいてくれるなんて、この七年間からしたら本当に奇跡みたいなものだ。 もう、こんな状態になんて戻れないと思っていたのだ。 目を合わせることはおろか、会話することさえないものと思っていたのだから。 でも、こうして蒼くんは傍にいてくれている。 それは…。 (ユウくんのお陰だね…)
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