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「いいのっ!だって、私っ…蒼くんの気持ち、嬉しかったからっ…」
「遥…」
蒼くんは蒼くんなりに私のことを思って行動してくれていたのだと知ることが出来たから。
「嫌われてなかったって分かっただけで…っ…。本当に嬉しかったからっ」
カーッと、顔に熱が集中していくのが自分でも分かる。
少しだけ驚いたような顔でじっ…と見つめて来る蒼くんの視線を感じながらも、恥ずかしさを誤魔化すように、ひたすらに笑顔を浮かべた。
すると、少しだけ眉を下げて蒼くんも笑顔を見せてくれる。
「当たり前だよ。遥は何も悪くないんだから。遥を嫌う理由なんか、ないだろ?むしろ俺は…」
そこで一旦言葉を区切ると、迷うように視線を彷徨わせていたが伏目がちにぽつり…と呟いた。
「ユウに嫉妬していた位なんだから…」
「え…?」
(嫉妬…?蒼くんが…?)
そこで視線を上げた蒼くんと、再び目が合う。
「俺は昔から人と争うことは嫌いだったけど、これだけは…。遥のことだけは、ユウに簡単には譲れないって思ってた」
「あお、くん…」
気が付いたらお互いに足を止めて向かい合っていた。
傍に立つ街灯の明かりが、まるでスポットライトのように二人を上から淡く照らしている。
「俺…遥のことが好きだよ」
静かに。優しい微笑みを浮かべながら蒼が囁くように言った。
「……っ…」
その、想像もしていなかった、あまりに嬉しい…嬉し過ぎる言葉に。
遥は、まるで時を止めてしまったかのように呆然と立ち尽くしていた。
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