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「たとえ遥がユウのことを好きで、すぐには忘れられなくても…って、遥っ?」
呆然と動かぬままに大きな瞳から涙を零す遥に、蒼はぎょっとして慌てた。
「ごめんっ。俺、またお前のこと何か…」
「…本当に?」
「えっ?」
「信じ、られないよ…」
「遥…?」
「だって。私も…蒼くんのこと、ずっと…好きだった、から…っ…」
その言葉に。今度は蒼が瞳を大きく見開き、愕然とした。
だが、ぽろぽろと涙を零し続ける遥に「もう泣くなよ」と慰めの言葉を掛ける。
「俺…。遥はユウのことが好きなんだと思ってた」
不意にポツリ…と落とした呟きに遥は顔を上げると、泣き濡れた瞳のまま複雑そうな顔をした。
「ユウくんのことも…もちろん好きだよ。でも、それは友達の『好き』だよ」
「ごめん。疑ってる訳じゃないんだ。ただ、驚いただけで…」
「うん…」
思わず見つめ合うと。
互いに恥ずかしさが募り、蒼は空を仰ぎ、遥は俯いてしまう。
そんな中、蒼はふと思い出したように制服のポケットから何かを取り出すと遥の前へと差し出した。
「これ…」
「?」
「遥にあげる」
目の前に差し出されたそれは小さな封筒だった。
「開けても、いい?」
「うん」
遥は片手で涙を拭うと、そっとその封筒の中身を取り出した。
すると、中に入っていたのは…。
(ペチュニアの…押し花!?)
それは今までに貰ったしおりとは、また別の色の花で作られていた。
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