動き始めた時間

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「それ、遥の為に作ったんだ。昔、遥…その花が好きだって言ってたし、いろんな色の花を見せてあげたくて。本当なら花束とか生の花の方が良かったんだろうけど…」 「蒼くん…」 やっぱり覚えていてくれたんだ…という思いと、ひとつの疑問が浮かぶ。 「あれ…?でもこれ、花屋さんのじゃ…?」 付いているリボンは少し違うものの、その他の造りは殆ど先日母が貰って来たものと変わらない。勿論、花屋で自分が直接購入してきたものとも同じ感じだ。 だが、蒼はどこか言いにくそうに口を開いた。 「実は、あの花屋は…ウチの親がやってる店なんだ」 「え…?」 その言葉に衝撃を受ける。 「店で売ってるやつも全部俺が作ってるんだ」 「えっ?」 確か、店員の女性が自分の子どもが作ってくれていると言っていた。 (それが…まさか蒼くんのことだったってこと!?) 「えええええーーーっ!?」 「…驚いた?」 「び…びっくりしたよっ」 でも、確かに家が花屋さんを経営しているのなら、蒼くんが小さな頃から花に詳しいことも頷けると思った。 蒼は、遥の驚き様にクスクス笑っていたが。 「暴露ついでに言っちゃうと、あの日」 「…あの日?」 「遥が店に来た日。俺、店の手伝いで奥にいたんだ」 「!!」 (はっ!恥ずかしすぎるっ!!) まさか、蒼くんに見られていたなんて!! あのしおりのことを確認する為に、わざわざ店を訪れる客…。それは普通の客として、どこか可笑しくはなかっただろうか? (いやいや、十分変わった客に違いないでしょうっ!)
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