マネキンと靴

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 基本的にウチの店は二十代後半辺りの女性がメインの客層だが、中には子連れの若いママさんもいて、親子でお揃い、あるいはウチのブランドの靴を娘にと言う人も少なくない。  そういうお客さんのために、店では子供用の服や靴も扱っていてるのだが、その靴が大人サイズのマネキンの足に無理矢理嵌め込まれていたのだ。  周りは気づいてないし、気づいたとしても犯人がおかしな真似をした、くらいに考えるだろう。でも私には、マネキンの靴とと荒れた店内因果関係が理解できた。  店内を荒らしたのはマネキンだ。その理由はたった一つ。自分の足に合う靴を探していたから。  昨日、トータルコーディネートの後、どうにも嫌な予感が収まらず、帰宅直前に店内にある大人用の靴を総てしまって帰った。それをマネキンは探していたのだろう。  最初は店内にある子供用の靴を履いた。けれど合わないサイズがどうしても気になり、大人用の靴を探して店内を荒らした。その途中で倒れ、あちこち砕けたりヒビが入ったりして動くことができなくなった…。  警察が帰った後、皆で店内を掃除したのだが、その時も私はマネキンには近寄らないようにしていた。だから自分の推測がどこまで正しいのかを裏づけることはできなかったけれど、翌日、清掃業者が引き取りに来るからと、店の裏手へ廃棄物となった品々が運ばれて行く最中、やたらと恨みがましい視線を感じ続けていたから、おそらく私の考えは当たっていたと思う。  …もし靴を添えていたらマネキンはどうなっていたのか。その後を予測はできないけれど、あのマネキンがまともに履ける靴をしまって帰って本当によかったと、心の底から思っている。 マネキンと靴…完
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