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「うむ……。確か、君との待ち合わせは約束よりも30分ほど早まったからな。2時前後から俺と別れる5時まで。俺が保証できる」
昼間はニシナさんにあちこち案内されて、都会とやらをそれなりに楽しんでいたのに。宿に戻ってくれば。自分の泊まるはずだった部屋で、女性が首を吊って警察ザタなんて、笑えない。
「5時以降は……ニシナさんに勧めて戴いた飯屋で夕飯を食べて……。店を出たのが6時過ぎ、でしょうか……。なので、その間は問題ありません。店の方が覚えていればの話しですけど……」
「残りの1時間は?」
「散歩がてら公園をふらふらと……。なので、何とも……」
公園の樹が綺麗に色づいていたものだから、つい。
僕とニシナさんのため息が重なった。
「とりあえず、ここにある君の持ち物は押収ということになる」
「ああ……。はい……」
自然と肩が落ちる。
なんて日だ。約束の人物は汽車を逃してやって来ないし。偶然、泊まった宿で人殺し扱いされるし。手持ちの荷物までなくなるし。
「すまないヒカル君……。確認なんだが、これで全部か?」
「ええ。今日は元々ここに泊まる予定、ありませんでしたし……」
「その時点で君を容疑者扱いにするのは気が引けるのだが、俺も仕事でな……」
「あの、彼女は本当に……殺されたのでしょうか?」
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