4.帰阪

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4.帰阪

二日目、海や花火で島根の夏を満喫し、迎える三日目の朝。大阪に帰る日である。僕は毎年、大阪に帰る日は朝から泣きそうになっていて、あまりしゃべらなくなる。最終的にわんわん泣くのだが、泣くまでにいくつかのステップがある。 「今日渋滞が結構酷いみたいだよ。早めに出たがいいかもしれんね。」 まず、おじさんのこの「交通情報の報告」である。この報告が入ると僕は泣く準備に入る。 「そうですか。ほな、はよ出んと。ぼちぼち出る準備しよか。」 と父親が言い、 「はい!あんたらも荷物まとめるの手伝ってや」 と母親が僕たちに言う。ここで、涙が出てくる。 玄関を入って、廊下があり、この廊下に面して大きな和室があるのだが、涙を流しながら僕はその和室へ移動する。この和室は毎年僕が泣く場所である。 この和室、30畳くらいあって、真ん中で仕切れるようになっており、廊下側から見て奥側に仏壇などが置かれている。僕が泣くのは廊下に面した手前側。 荷物手伝いを放棄し、和室で涙を流しているとおばあちゃんが来てくれる。そしておばあちゃんが、僕の頭をなでながら、 「そげ泣かんでも、またすぐこれーわね。来年も待っとーけんな。」 とても優しい口調で言ってくれる。これで完全にアウト。 「うわーん、嫌やー!帰りたくないー、うわーん」 わんわん泣きだす。泣く僕を見て、妹も弟もわんわん泣きだすのだが、泣きながら荷物をもってスタスタ玄関を出て、軽快な足取りで車へ向かう。薄情な奴らである。 Tくんも泣いてくれる。でも、Tくんは泣かれる姿を見られたくないので、早々に外へ出る。島根のみんなは車のところまで出てきて見送ってくれるので、全員が外へ出ていく。
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