4.帰阪

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僕は毎年、納得いくまで泣いてから家を出るので、父親も母親も僕を置いて先に家を出る。なので、毎年僕は一人になってからもしばらく泣き続ける。 ある程度泣いて、帰らないといけない現実を受け入れ、車へ向かおうとしたときである。横に誰かが立った気がした。 おばあちゃんが迎えに来てくれたのかと思って顔を上げると、そこにはだれもいない。風鈴が「チリーン」と涼しげな音を奏でているだけだった。 (あれ?今、絶対だれかおったぞ。) 気のせいとは思えなかったので、 「おばあちゃん?、Yおばちゃん?」 と周りに声をかけてみたが、反応がない。 (おった気ぃしたけどなぁ) 気のせいだったかもしれないと自分に言いきかせ、家を出て車へむかった。車の近くでみんなが待ってくれていて、僕が姿を見せると 「やっときたー」 みたいな感じになるので、このときは毎年申し訳ない気持ちになる。挨拶をしてみんなで車に乗り込もうとしたとき、父親がカードケースか何かを忘れたことに気付き、 「すみません、ちょっと取ってきますわ!」 と言って家に戻っていった。
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