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僕は毎年、納得いくまで泣いてから家を出るので、父親も母親も僕を置いて先に家を出る。なので、毎年僕は一人になってからもしばらく泣き続ける。
ある程度泣いて、帰らないといけない現実を受け入れ、車へ向かおうとしたときである。横に誰かが立った気がした。
おばあちゃんが迎えに来てくれたのかと思って顔を上げると、そこにはだれもいない。風鈴が「チリーン」と涼しげな音を奏でているだけだった。
(あれ?今、絶対だれかおったぞ。)
気のせいとは思えなかったので、
「おばあちゃん?、Yおばちゃん?」
と周りに声をかけてみたが、反応がない。
(おった気ぃしたけどなぁ)
気のせいだったかもしれないと自分に言いきかせ、家を出て車へむかった。車の近くでみんなが待ってくれていて、僕が姿を見せると
「やっときたー」
みたいな感じになるので、このときは毎年申し訳ない気持ちになる。挨拶をしてみんなで車に乗り込もうとしたとき、父親がカードケースか何かを忘れたことに気付き、
「すみません、ちょっと取ってきますわ!」
と言って家に戻っていった。
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